京王プラザホテルのユニバーサルルーム

桜こみちハートフルトラベルは、障害のある人や高齢の人が旅を楽しめること、そして福祉に関わる人が先駆的な取り組みを見に行くことができるツアーの企画をしたいという思いで設立した旅行会社です。

今回、旅行の割引制度・もっとTOKYOが始まるにあたっても、桜こみちの特徴を活かしたご提案ができないかと考えました。

そんな中で出会った京王プラザホテル様のユニバーサル対応の取り組み。

「京王プラザホテルのバリアフリー推進は1988年に世界リハビリテーション会議の会場となったことがきっかけとなりました。会議開催に合わせ、ユニバーサルルームを15室設置。その後、目や耳に障がいのあるお客様への対応を推進し、2002年3月には、これまでご利用いただいたお客様の声やバリアフリー建築専門の設計事務所の助言をもとにデザインした新しいユニバーサルルーム10室を増設いたしました。2018年には、医療・福祉とは趣を異にするホテルでの優雅な時間をお過ごしいただけるようにより洗練されたデザインに一新、そして新たにより広いラグジュアリータイプを3室新設し、合計13室となりました。」ホームページより)

バリアフリー法では、ホテルの客室50室に1室、車いす使用者用の部屋を設ける必要があります。

でも、そうした法の基準を満たすだけではないモチベーションがホームページから感じられる…京王プラザホテル様の取り組みは、いったいどのような思いで行われているのだろうか。ぜひお話をお聞きし、皆さんにもお知らせしたいと思い、取材させていただきました。

取材に応じてくださったのは、客室支配人の中村さおりさんとシニアセールスマネジャーの中谷すなほさんです。

中村さおりさんと中谷すなほさん

【京王プラザホテル新宿 ユニバーサルルームの基本情報】
本館30階に13室のユニバーサルルーム。ジュニアスイートツイン 1室 67.4㎡
ラグジュアリーデラックスツイン 2室 47㎡
デラックスツイン 10室 35.5㎡
https://www.keioplaza.co.jp/guide/universal/universal_list.html

【主な貸し出し備品とサービス】
https://www.keioplaza.co.jp/guide/universal/universal05.html
車椅子/バスタブすべり止めマット/バスタブの移乗台/踏み台/バスタブ用の手すり/バスボード/シャワーチェア/防水対応自走式車椅子(ジュニアスイートのみ)/トイレ用手すり、背もたれ/トイレ用背もたれクッション/電動ベッド/電動ベッド用手すり柵/電動アームチェア/低位置ハンガーバー/茶器類をデスク上にセット/ボタンを押すだけの電気ポット/補助犬用ボウル・マット/シグナルエイド/ミニボトルに輪ゴムをセット/フロントとつながるUDトーク/アラートシステム

1988年からスタートしたユニバーサル対応

「私たちの部屋は、バリアフリーではなく、ユニバーサルルームと呼んでいます。」と中村さん。

障害のない人に使いづらい部屋だと、ホテルにとっても稼働しづらいため、障害のある人に必要な備品は、その必要に応じて取り付け・取り外しが可能なものを中心にして対応するという方針を取ったのだそうです。

そして、ホテルによっては最低限の設備しかないところもありますが、障害のある人が「非日常」を楽しめる、ラグジュアリー感を感じられる部屋を実現したいという思いもありました。

京王プラザホテルがこのような取り組みをスタートさせたきっかけは、1988年。リハビリテーションの世界会議が京王プラザで開催されたことによります。1980年代といえば、まだまだ街中のバリアフリーも進んでいない時代です。京王プラザホテルのスタッフも、当時は「車椅子ってどう押すの?」というレベルでした。そこで、みんなで車椅子を押す練習から始めました。そして、「様々な人が利用しやすいホテルに」と、入り口、バスルームのドア幅を広げた最初のユニバーサルルームが誕生し、京王プラザホテルとしてのユニバーサル対応の取り組みがスタートしたのです。

2002年には新しいユニバーサルルームを10室設置。ホテルの社会的責任を果たすという考えもあり、同じ年、ホテル内に「バーズアイ」というプロジェクトチームができました。「鳥のように俯瞰して見られるようなチーム」という思いを込めたバーズアイのメンバーは接客担当に限らず様々な部署から募り、年齢も役職も多様なスタッフが集まりました。そして、他のホテルの取り組みを見に行ったり、障害者団体のイベントに参加したりといった体験や意見交換を積みかさねてきました。

また、2004年からは労使共催のチャリティイベント「ボランティアプラザ」を開始。毎年実施していたボランティアプラザは、今はコロナ禍で休止していますが、最後に実施できた2019年には、バザーや障害者スポーツ体験、ユニバーサルサービス体験などを行っています。

こうした取り組みの積み重ねが、「京王プラザホテルはこういう取組みをするのが当たり前なんだ」というスタッフの意識の土壌を作っていきました。

積み重ねを生かして、2018年に生まれ変わったユニバーサルルーム

2002年から改装していなかったユニバーサルルームですが、経年劣化や法改定への対応をするため、2018年に改装し、13室のユニバーサルルームへと生まれ変わりました。

これまでの取り組みの中で、利用していただいた多くの障害のあるお客様からいただいたご意見と、そこでスタッフが試行錯誤、取り組んできた知恵を活かした新たなユニバーサルルームづくりを進めていきました。

京王プラザホテルは1971年にできた建物。ユニバーサルルームを改装するといっても、段差があったり、決まった広さ以上に広げられないといった物理的な制約もある中での取り組みです。どうしても段差ができてしまい、スロープを設けざるを得なかったり、水回りを充実させようと思うとベッドルームが狭くなってしまうことも。でも、車いすを利用しているお客様が少しでも使いやすくなるよう、ベッドルームも広くしたい!その思いを実現するため、テレビを置く場所の壁を掘ってテレビが出っ張らないようにするなど、プロジェクトチームで知恵を絞った部屋作りを実現しました。

ライティングデスクの前のテレビの壁がくりぬかれていて、テレビが収まっている。

「大切なのは、コミュニケーション」と中村さん

「ユニバーサル対応だけではなく、接客の基本ですが、お客様とのコミュニケーションをとることを大切にしたい、と考えています」と中村さん。

スロープの勾配がきついことや、安全面から客室内での介助行為はホテルスタッフは担えないことなど、お客様にとってのマイナス情報も隠さずにお伝えしていく。でも、そんなマイナス面があっても、それをプラスに転じられるような工夫をしていきたい。そしてお客様には、「こんなこと言ったらわがままかな」とは思わず、まずは相談してみてほしいとおっしゃっていました。

ユニバーサル対応をするスタッフの心構えとして、

・障害に対する基本的な知識を持つ

・完璧でなくてもできることがあると考える。例えば手話ができなくても、それだから「聴覚障害のある人とコミュニケーションできない」と考えるのではなく、筆談をすればコミュニケーションすることはできます。

・そうした知識や心構えを持ったうえで、「この人は車椅子だから押してほしいだろう」といった決めつけはせずに、何をしてほしいのかをご本人に聞く。

ということを大切にしていらっしゃるというお話は、とても心に残りました。

基本知識を持ったうえで決めつけずに本人の意見を聞き対話をしながら、よりよい方法を探る…これは、福祉従事者であっても必ずしもできていない、でも本来できていなければならないとても大切な姿勢であると、社会福祉士である筆者は思います。

1980年代から脈々と受け継がれてきたユニバーサルマインドを体験しに、皆さんも京王プラザホテルに泊まってみませんか?

桜こみちハートフルトラベルのご提案するプランでは、チェックアウト時間が通常の午前11時から延長して午後1時。ラグジュアリーな空間をゆったり楽しめるお得なプランの詳細はこちらからどうぞ。

また、ユニバーサルルームの設備についてはSNSでご紹介していきます。

Twitter
Instagram
Facebook

コメント